◇ 俺にチョコを食わせろ ◇



 バレンタインデー。
 お菓子屋の陰謀と言うことは充分わかっているのに、マスコミが揃いも揃って「チョコをあげなければいけない」「チョコをもらわなければいけない」という感じの世論を作り出しているからタチが悪い。
 もっとわかりやすく言うならば、小学校中学校のガキどもから貴重なお小遣いを巻き上げようとしているワケなのだから。
 しかも今年はゴティバだのスイスチョコだの何だのと、高級志向のチョコレートがもてはやされており、OLあたりにもターゲットを向けたお菓子屋のこれでもか、と言えるほどの販売戦略が繰り広げられているワケで。

 そんな中、貰う側の男性からしてもあまりいい時期ではない。
 特に小学校、中学校という多感な時期に、たかだかチョコの数ごときで優劣を比べられるとは何たることだと。
 とは言え、チョコを貰ってもその後に3倍返しというルールも待っているので、はいはいと貰いまくるのも問題ではあったりするのだが、それはそれとして。

 もし、チョコレートを貰うとしても、嬉しくないチョコレートを貰うことがある。
 義理チョコだったらまだいい。一番タチが悪いのは、クソ不味い手作りチョコレートだ。

 手作りチョコレートはいいものだ、と一般に言われるけれどもとんでもない。
 湯せんでチョコを溶かして型で固めて楽勝、という感じで手作りチョコができると思っている女子が多すぎる。
 男に食わす前に味見をしてくれよと言いたくなるチョコもあったりする。
 例えばあかり姉(以下検閲)

 それはそれとして、昨年のバレンタインデーにはチョコフォンデュ(怪しい食材含む)で話題になってしまったこの毒々コラム。
 今年はどんなチョコにしようか。あかり姉さんが出した結論はこうであった。

 チョコカレーにしよう。

 ……こうして、今年のバレンタインが幕を開けた。



  ◇ 今回の被験者 ◇
 ・船木屋  (ぐーたら社壊人)
 ・あかり姉さん  (えろえろよー)

  ◇ 試食 ◇

チョコとバナナって合うよね
 カレーを作るとき、チョコを1欠片ぐらいを隠し味に入れると、まろやかでコクがあるカレーに変貌する。
 では、カレールーと隠し味のチョコレートの比率を逆転させたらどうなるだろう。
 まさに逆転ホームランの発想だった。


  チョコカレー レシピ(4人前)
  ・にんじん    1本
  ・たまねぎ    1個
  ・ジャガイモ   中1個
  ・牛肉角切り   200g
  ・バナナ     中1本
  ・板チョコレート 1〜2枚
  ・カレー粉    少々
  ・小麦粉     少々
  ・胡椒      少々

 バナナを入れるのは、単純にチョコバナナは美味いだろうという理由から。
 しかし、煮バナナの恐ろしさは、喫茶マウンテンで充分懲りているはずなのだが、チョコレートがあるのだったらバナナは欠かせないだろう、というワケで、急遽具材として加わることとなった。

チョコ投入
 最初ににんじん、たまねぎ、ジャガイモの皮をむき、それぞれ適当な大きさにカットする。
 鍋にお湯を沸かしつつ、野菜を茹でる。
 野菜が煮えてきたところで、フライパンで肉を軽く焼き、表面に軽く焦げ目が付いたところで鍋の中に入れる。
 ここまでは普通のカレーだ。
 次にチョコレートを加える

 チョコを入れた瞬間から、ココアの甘ったるい香りがしてきた。チョコレートとココアは同じモノなのでその辺は予想の範囲内だが、やっぱり異様であるのは否めない。
 これはこれで食欲をそそられるのだが、チョコとにんじん、ジャガイモ、肉との相性はどうなんだろうと考えてしまうと、食欲が若干減退してしまう。
 昨年のチョコフォンデュの味から予想すると、ジャガイモはまだ大丈夫だろう。肉も脳内で味の分離をすればいけそうだ。
 少なくとも、今のところは以前食べたアザラシカレーなんかと比べたら全然マシな部類に入るワケで。
 全体にチョコレートが馴染んできたところで、次の具材を投入しよう。




バナナ! カレー粉

 バナナ、そしてカレー粉が投入された。
 「カレー粉を入れれば何でも美味しくなる」というカレー粉神話は、前回のアザラシカレーでもろくも崩れ去っているのは記憶に新しい。
 そのため、チョコレートとも合わない、という可能性は依然として捨て切れていないワケだ。
 そんな不安を抱えながらカレー粉を溶かしていると、我々の目の前に完成形がついに姿を現した。
 これが、チョコレートカレーだ!!!



見た目は普通に美味そう
 外見は普通のカレーかハヤシライスと言った感じ。
 普通に美味しそうな外見なので、ひょっとすると、と思わせてくれる。
 しかし、香辛料の香りよりもココアの甘ったるい香りが相変わらず漂うので、まだまだ心配である。

 とりあえず1口食べてみると、まず初めにカレー粉のぴりっとした辛さが来る。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という諺もあるのだが、少しの辛さでも十分自己主張できているのが凄い。
 しかし、美味しいのはここまで。その後に訪れるチョコの甘さと、ご飯との絶妙なまでの相性の悪さにただただ後悔。
 そこに、煮バナナのキツい酸味がコラボレーションされて、絶望のどん底に突き落とされる。

 肉やジャガイモに関しては、脳内で味を分離すればまだ食えないことはない味。
 全体的に見ると、決して不味くはないのだけど、許せない味。この言葉に尽きる。



 ご飯にチョコクリームを塗っても平気で食べられる人なら、大丈夫なカレーではないかと思われる。

 まだカレーの隠し味があるからいけるのだろうか。
 もしそうであるなら、カレー粉神話は一応復活ということになるだろう。
 やっぱカレー粉は偉大だよ!!

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